実社会との関係
倫理を勉強する場合には、それがどのように実社会と関係するかを常に考えておくことが重要です。
ここでは、そのひとつの例として、医療の現場における頭脳流出の問題を取り上げましょう。
一見すると、頭脳流出なんて、倫理の問題とは無関係なように思われます。
しかし、そうしたミクロなところにこそ、真の倫理的問題は埋め込まれているといえるのです。
頭脳流出の問題の例
具体的に見ましょう。
自分の国で医学を学んだ学生が、やがて医療関係者となります。
ところが、そうした医療関係者が国外に出ることを制限しようとする国があります。
なぜかというと、自分の国で学んだ医者たちが国外に流出されるのは国にとって損だからです。
では、そうした国々はどうやって、そのような制限を正当化するのでしょうか。
そこで政府が持ち出すのは、「うちの国によって学を修めたのだから、そのぶんうちの国に貢献するべきだ」というロジックです。
このロジックはどこまで有効なのでしょうか。
これは倫理の問いです。
分析的手法による学問的な倫理学では
アメリカで発展している分析的手法による学問的な倫理学では、こうした現実的な問いを学問的に扱うことを試みています。
たとえば、これはコミュニタリアニズムと呼ばれる共同体を重視する立場と、リベラリズムと呼ばれる自由を重視する立場との対立に読み替えることができるのです。
このように、現実の問題を扱えるのが倫理学です。