倫理学は哲学の一分野です。
哲学は、真・善・美を扱う学問だとは、よく言われることです。
その3つそれぞれが、論理学・倫理学・美学といったサブカテゴリに対応しています。
つまり、倫理学における善と、美学における美は、ちょうど比較するのに良い概念なのです。
「善いこと」と「美しいこと」は、ときとして同一視されます。
プラトンの記述によれば、古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「善美なるもの」という表現を用いています。
ある種の世界観のもとでは、真なること、善いこと、美しいことは等価になるのです。
一方で、「美しいこと」は「善いこと」を上回る場合があります。
善いことというのはルールを守る人のようなものです。
しかし、ときにはルールを破っても、美しい友情や愛のために尽くす、ということがありえます。
このとき、美しいことは善いことを越えるのです。
しかし、そうであるとするならば、倫理は美学よりも劣った学問なのでしょうか?
そんなことはありません。
なぜならば、善いことは美しくあることに負けるのか、ということ自体がすでに、倫理学的な問いだからです。
学問としての倫理学は、そうした一次元上にある問題を真剣に考えることができるのです。