慶應通信は卒業できないのか？慶應通信生が本当の卒業率を検証します

通信制大学の中でも人気の高い慶應義塾大学通信教育課程。
慶應通信には文学部、経済学部、法学部の3学部があり、教員組織は通学課程と同じ教員で構成され、学生は所定の単位を修得すれば通学課程と同じく慶應義塾大学の卒業生として、学士の学位を取得できます。
さらに、通学課程と比較すると学費も安いことで、通信制大学にへの入学を考える人は慶應通信への進学を一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
ところが、その人気の高さに反して、慶應通信の卒業率は通信制大学の中で低いと評判です。

慶應通信は卒業できないと言われてしまう理由について検証します。

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慶應通信の在学生数

まずは慶應通信の在学生数のデータです。
慶應義塾大学通信教育課程の公式ホームページによると、2020年度の在学生は8634人です。（2020.5.1現在）

慶應義塾大学通信教育課程ホームページ「データで見る通信教育部」、(https://www.tsushin.keio.ac.jp/about/data.html 閲覧日：
2020年7月20日）

慶應通信の学部別人数

• 慶應義塾大学通信教育課程文学部の在学生は3598人
• 慶應義塾大学通信教育課程経済学部の在学生は2820人
• 慶應義塾大学通信教育課程法学部の在学生は2082人
• 教職の在学生は64名
• 科目等履修生は70名

2020年度の在学生の合計8634人

慶應通信では文学部の在学生が最も多く、3598人となっています。

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慶應通信の入学者数

次に慶應通信の入学者数です。

慶應通信の2020年度の入学者数

慶應義塾大学通信教育課程の公式ホームページによると、2020年度の新入生は784人です。
この人数は、2020年度4月1日入学（春入学）の人数ですので、これに2020年度10月1日入学（秋入学）を足した人数が2020年度の新入生の正確な数となります。

過去のデータを参照すると、慶應通信の10月1日入学（秋入学）は、概ね400人〜600人の範囲であると予想されるので、2020年度の新入生は1300人前後と予想されますが、コロナ禍の影響を受け減少する可能性もあるかもしれません。

慶應通信の過去2年度分の入学者数の推移

慶應義塾大学通信教育課程の公式ホームページには、過去2年度分の入学者数の推移も掲載されています。
そのデータを元に過去2年度分の入学者数の推移の表を作成しました。

慶應通信の2018年度の入学者数

慶應通信の2019年度の入学者数

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慶應通信の2019年度の卒業生の数

慶應義塾大学通信教育課程の公式ホームページによると、慶應通信の2020年度の卒業者数は206人です。

2019年度の卒業生の学部別人数

2019年度の卒業生の学部別の割合

慶應通信の2020年度の卒業者数は206人のうち、

慶應通信の学部別の卒業率

※学部別人数は2020年度のものですが、年度によって大きな変動はないと仮定し計算します。

上記の数値を元に慶應通信の学部別の人数と卒業生の人数の割合を比較すると、

文学部の卒業生の割合は慶應通信の学部別の人数と比較すると卒業率が高くなっています。
経済学部の卒業生の割合は慶應通信の学部別の人数と比較すると7%近く差があり、卒業率が低くなっています。
法学部の卒業生の割合は慶應通信の学部別の人数と卒業生の人数の割合を比較してもあまり割合が変わらないようです。

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慶應通信の卒業率

さて、ここまでのデータを利用して、慶應通信は卒業できないのかということを検証しましょう。

「慶應通信の卒業率」＝「卒業者数」÷「入学者数」で計算する場合

まず、入学してくる人数に対して何人が卒業したかを

「慶應通信の卒業率」＝「卒業者数」÷「入学者数」

で計算する場合を考えます。

慶應通信の2018年、2019年度の入学者数は、おおよそ1350人です。

ですので、

「卒業者数206人」÷「入学者数1350人」＝15％

慶應通信の卒業率は15％となります。

ただし、この計算方法には問題があります。

前述のように、慶應通信の2020年度の在学生の合計8634人です。

この在学生の人数である8634人を、慶應通信の１年あたりの推定入学者数の1350人で割ると、6.3になります。
つまり、推定入学者数の6.3倍が在籍していることになり、4年以上在籍する学生が多いと予想されます。

慶應義塾大学（通学）の場合、学士課程の学生の人数が28643人で、入学者6437人、卒業者6395人なので、同じように計算すると、4.4になります。
つまり、入学者数の4.4倍が在籍していることになり、大多数の学生が4年で卒業していることが読み取れます。

通信制大学以外の大学であれば、「卒業率」＝「卒業者数」÷「入学者数」ですが、慶應通信の場合は入学後4年以上在籍する学生が多いため、「在学生の人数」も考慮しなければ、正しい卒業率は計算できないということになります。

慶應通信の在籍期間は入学の課程で決まる

では、ここで慶應義塾大学通信教育課程の卒業のために必要な在籍期間について確認しましょう。

慶應通信では入学の課程により卒業のために必要な在籍期間が変わります。

普通課程、特別課程、学士入学の学生の割合については公表されていないので、2020年度新入生の年代別人数を参考に推測します。

慶應義塾大学通信教育課程の公式ホームページによると、2020年度新入生の年代別人数のうち18歳〜24歳が784人中247人で32%です。

そこから、学生の3人に1人は普通課程入学であると予想できます。
それより上の年代についても、通信制大学への進学理由として大卒資格の取得が目的であることが多いと推測できるので、慶應通信の入学者の普通課程、特別課程、学士入学の学生の割合について、ここでは普通課程が一番多いと仮定して、慶應通信の卒業率について考えます。

では、慶應通信の卒業率は？

慶應通信の入学者は普通課程が一番多いと仮定しましたが、これでも計算式を作りにくいので、過去３年の入学者全員を普通課程とし、卒業要件として4年間の在籍が必要であるという前提で考えます。

2020年度の在学生の合計8634人のうち、卒業要件の4年間の在籍期間を満たせない学生の人数を計算します。
慶應通信の2018年、2019年度の入学者数は、おおよそ1350人なので、1年あたりの入学者数を1350人とすると、卒業要件の4年間の在籍期間を満たせない学生の人数は4050人です。

在学生の合計8634人から、卒業要件の4年間の在籍期間を満たせない学生の人数の4050人を引くと、4584人になります。
つまり、卒業要件の4年間の在籍期間を満たした学生の数が4584人になるわけです。

「慶應通信の卒業率」＝「卒業者数」÷「卒業要件の4年間の在籍期間を満たした学生の数」

この計算式で計算すると、慶應通信の卒業率は、

「卒業者数206人」÷「卒業要件の4年間の在籍期間を満たした学生の数4584人」=4.5%

慶應通信の卒業率は4.5%となります。

この計算式の場合、過去３年の入学者全員を普通課程という前提条件を付け、計算を簡略化しているため、実際には「卒業要件の在籍期間を満たした学生の数」はもっと多いことが予想されます。
そうなると、実際の卒業率はさらに厳しい数字になるかもしれません。
参考「卒業要件の在籍期間を満たした学生の数」を6000人と仮定した場合は、慶應通信の卒業率は3.4%となります。

今回の計算による慶應通信の卒業率4.5%という結果は、一般的に言われている慶應通信の卒業率は5%と近い数値となりました。

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慶應通信は卒業できないのか

慶應通信の卒業率は5%しかないというのは、なかなか絶望的な数字と言えます。
では、本当にほとんどの人が慶應通信を卒業できないのでしょうか？

ここでは、慶應通信は卒業できないのかということについて検証します。

慶応大学通信というだけで評判がすごいゆえに起こること

慶応大学通信というだけで評判が高いのが慶應通信です。
そのため、本当に自分の学びたいことなのか、そもそも学び直したいのか、という部分があやふやな人が多い印象を受けます。

実際、慶友会（慶應通信のサークルみたいなもの）の新歓などに行くと、「慶応大学の学生になりたくて慶應通信に入学しました！」、「慶應の卒業生になりたいんです。」、「受験戦争も入試もなしで慶應の学生になることができてすごく嬉しい。」という新入生が一定数います。
当然ですが、そのような発言をする新入生はあっという間に姿を消します。
また、有名人の慶應通信入学のニュースで自分も簡単に入れると思って入学する人もいるようです。

慶應通信に入学したけど何もしない

慶應通信に入学したものの、学生証をもらったことに満足し、そこで燃え尽きてしまったり、前述の慶友会のイベントには積極的に参加するものの、レポートを出していないし、単位は取れていないという学生も珍しくありません。

慶應通信の場合、入学時の合否の基準と、入学後のレポートの合否の基準、科目試験の合否の基準には大きな乖離があります。
入学できたからといって、その後、レポートや科目試験に合格できるのかというと全く別の話なのです。

そのため、慶應通信のレベルについていけなくて諦めてしまう人もいます。
また、卒業することを諦めて、スクーリングや慶友会での交流を楽しむだけのために慶應通信に在籍している人もいます。
大卒資格や学位の取得が目的ではないのなら、そのような形で慶應通信での学びや学生生活を楽しむのもありかなと思います。

慶應通信を卒業できる人

慶應通信では、慶應通信に入学後に１科目でもレポートを出せれば卒業できる可能性が高い、とよく言われています。
これを裏付ける統計はありませんが、レポートを書くこともできなくて、レポートの書き方を自分で調べることもできなくて、他人に助けてもらわなければ何もできない人は、そもそも慶應通信が合っていないと推察できるので、おおよそそういうことだといえるでしょう。

慶應通信の卒業率は4.5%という結果には、慶應通信に在学しつつも、学生として単位取得などを行わない学生を一定数含んでいます。
そのため、この計算式の「卒業要件の4年間の在籍期間を満たした学生の数」から「単位を取ることもなく在籍している学生の数」を引いて再計算すれば、卒業率の数字はもっと高いものとなるでしょう。

そうはいっても、慶應通信の卒業率は他の通信制大学と比較すると低いものであることには変わらないと思います。

慶應通信は不親切という評判

慶應通信は不親切という評判を一度は耳にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
実際には、学費も安く、卒論期間中は図書館も利用でき、慶應義塾大学の通学生と同じレベルの講義をスクーリングで受けることができるといった面では、慶應通信は不親切という評判に異議を申し立てる以外の選択肢はありません。

次に、慶應通信の入学時の小論文とその後にレポートや科目試験の合格に求められるレベルの乖離については異論は出ないでしょう。
慶應通信に入学したものの、慶應通信のレベルについていけない場合は自分で努力するか、卒業まで7〜10年かけるつもりでじっくり取り組んでいくしかありません。
そのような面で、慶應通信は不親切という評判が出てしまうのかもしれませんが、そもそも、慶應通信は入学者に対して、大学での学習に必要な基礎知識を補うための学習サポートを約束していません。

独学でどれだけ頑張ることができるのかということが慶應通信では求められます。
ですので、慶應通信は不親切と感じてしまう人は、基礎学力アップのための学習サポートが充実していると評判の通信制大学に進学する方が大卒資格や学位は取りやすいと思います。

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どうしても慶應通信を卒業したいなら

基礎学力をアップする

高校までの「ただ暗記するだけ」のように思える暗記は、発展的な学問、つまり大学での学問を学ぶための下地になっているのです。
つまり、暗記すること自体は確かに学問の本質ではないかもしれませんが、本質を学びたい人にこそ暗記は必要なことだといえます。
ですので、基礎学力をアップする努力をすることで慶應通信を卒業できる可能性はアップするでしょう。

他の通信制大学を卒業し、慶應通信に学士入学する

他の通信制大学を卒業し、慶應通信に学士入学するというのもひとつの方法です。
例えば、サイバー大学では、「高校卒業からしばらく経っていて、基礎学力が心配」という学生のために、大学での学習に必要な基礎知識を補うための、無料の補習科目で学生をサポートしてくれます。
このような基礎力を補う学習をリメディアル学習といいます。
サイバー大学では、このリメディアル科目を入学前の準備や、授業でつまづいた時の復習などに、積極的に活用することができます。
高卒・大学中退者で大学での学習に必要な基礎知識や基礎学力に不安のある方は、サイバー大学のように学生の学習サポートの評判に定評のある通信制大学をまず卒業し、慶應通信に学士入学することで卒業率は格段にアップするはずです。

おわりに

今回の計算による慶應通信の卒業率4.5%という結果は、一般的に言われている慶應通信の卒業率は5%と近い数値となりました。
レポートを提出し、科目試験に合格し、単位を取得して積み上げている学生の数で計算することができれば、卒業率はもっと高くなることが予想できますが、それでも慶應通信の卒業率は低いままだと予想されます。
慶應通信の入学から卒業までは決して容易くはないでしょう。
だからこそ、慶應通信では所定の単位さえ修得し卒論を書けば、通学課程と同じく慶應義塾大学の卒業生として、学士の学位を取得できるのです。

参照ページ（閲覧日：2020年7月20日）：
https://www.tsushin.keio.ac.jp/about/data.html
https://www.tsushin.keio.ac.jp/admissions/period.html
https://www.keio.ac.jp/ja/about/assets/data/2019-university.pdf